組織に“体幹”を──現場から経営を動かす、エンゲージメント改革の最前線

瓜田良介(うりた・りょうすけ)
1979年東京都中野区生まれ、早稲田大学人間科学部卒業。U-ZERO COO。アステリア株式会社、イノーバ株式会社にて人事部リーダーとして人事業務改革、人事施策企画・実施を担当。サイダス株式会社では営業本部部長としてタレントマネジメントシステムの営業企画・販売に従事。SAPジャパン株式会社では人事人材ソリューション本部営業部リージョナルセールスマネージャーとして、SuccessFactorsのセールスにて消費財メーカー大手上場企業のソリューションセールスや30代未満の若手育成を担当。その後、総務部にて東京・大阪新オフィスプロジェクトのプロジェクトマネジメントを務める。2024年、U-ZERO創業メンバーとして参画。“人と組織を科学する”を軸に、COOとしてプロダクトと現場の橋渡しを担いながら、エンゲージメント経営の社会実装を推進している。


「Unhappyな働く人をゼロに」。株式会社U-ZERO(以下、U-ZERO)は、各企業が人的資本経営を強く求められるこの時代において、その経営を後押しするエンゲージメントにおいて、エンゲージメント共創経営を推進する会社だ。人と組織のエンゲージメントを可視化するデジタルソリューションの開発・販売や、エンゲージメント共創経営を実現するためのコンサルテーション、従業員エンゲージメント向上のための研修やその他打ち手となるエンパワーメントソリューションの提供など、統合的なアプローチで組織がエンパワーメント共創経営を実現するためのサービスを提供している。これまでに上場企業からスタートアップ、地方自治体まで多様な組織での導入実績があり、経営と現場をつなぐ“組織のOS”としての価値を広げてきた。現在は、プロダクト開発やパートナー企業との連携も進み、サービスの進化とともに、エンゲージメント共創経営の社会実装をさらに加速させている。今回は、COOとして横断的に事業全体を推進し、U-ZEROの構想を現場に実装する役割を担う瓜田良介さんに話を伺った。

「働き方が多様化し、リモートワークや副業も一般化してきた今、“なぜこの会社で働くのか”という意義が、以前より問われるようになってきました。社員一人ひとりのエンゲージメントをどう高めていくかは、あらゆる組織にとっての重要なテーマです。多くの企業が社員の意識や状態の調査に取り組んでいますが、こうしたサーベイを“やりっぱなし”にしてしまっている会社も少なくありません。肝心なのはその後どう動くか。U-ZEROは、まさにそこを支援の中心に据えています。調査はあくまで出発点です。そこから、何が本質的な課題かを明らかにし、どう改善につなげていくのか。最終的に“行動”に落とし込めるかどうかが、エンゲージメント施策の成否を分けます。」

昨年7月に社員3人でスタートしてから、今では60人規模に広がるU-ZERO。提供価値はサーベイだけにとどまらず、設問設計から結果の分析、レポート作成、ワークショップ設計、経営層への報告、部門間の対話のファシリテーションまで、組織内のエンゲージメントに関わる課題解決に必要なすべてを横断的にカバーする。さらに、AIネイティブを活用したプロダクト開発に取り組んでおり、データの“意味づけ”から“行動設計”への接続を、よりスムーズに行える環境づくりを進めているという。

「組織がなぜ今うまくいっていないのか、何を整えるべきなのか。再現性のある“型”と、個別性のある“文脈”の両方を大事にしながら会社ごとにカスタマイズして対応していきます。現在は、これらの支援ノウハウをテクノロジーに乗せるため、VoE(現場の声)のデジタルプロダクトを開発中です。これは、社員との会話を通じて建設的な意見や感情を引き出し、それらの非構造化データを分析・可視化して、経営の意思決定に活かすためのものです。サーベイの定量的なスコアだけでなく、そこに紐づく『なぜそう思ったのか』『どうすれば良くなるのか』といった定性的なインサイトを引き出すことが目的です。」

「たとえば300人の組織で、900件以上の自由記述が集まることもあります。それを一つずつ読むのは難しいし、読み手によって解釈がブレることもある。でも、AIを使えば声の傾向や部門間のズレを客観的に可視化できます。さらに、その先の打ち手まで提案できるところを今開発しており、すでにいくつかのHR系パートナー企業と協働しながら、個別企業への伴走支援とSaaSプロダクトの融合を進めています。現在は、エンゲージメント共創経営を実現するための伴走支援は我々が担っていますが、今後は、パートナー企業も含めて営業や業界別導入支援などを任せる形で、拡張性のあるエコシステムを目指しています。」

エンゲージメント共創経営において「これさえやればうまくいく」という万能な方法はない。具体的に何をどうすればよいかという各社固有の答えが存在するからこそ、時間とコストをかけ、「問い」を深め続け、対話し、伴走する総合的なアプローチの姿勢が求められる。そのプロセスこそが、U-ZEROの挑戦であり、クライアントにとっての変化の原点なのだという。

「そもそも組織は、エンゲージメントサーベイに代表される数値のみだけで課題を判断し解決策を導き出すことは難しいと思っているんです。価値観も育った環境も違う人が集まって、何かを成し遂げようとする。そのズレや衝突をどう乗り越えるかにこそ、組織の醍醐味がある。U-ZEROが目指すのは、経営が問いを投げかけ、対話を生み、変化を支える存在でありたいと考えています。」

「これまでの人事経験、人や組織のソリューションに携わり、ベンチャーや大手企業の経験を活かしながら横断的に何でもやる気概でU-ZEROにJOINしました」と笑いながら話す瓜田さんは、現場の課題に向き合いながら、プロダクトの改善にも、経営との接続にも関わる翻訳者のような存在だ。SAP時代は人事ソリューション「Success Factors」の営業マネージャーを務め、オフィスのプロジェクトマネジメントも担当。前職ではタレントマネジメント領域のマネージャーとして、人と組織に関わる課題と向き合ってきた。U-ZEROには立ち上げ期からジョインし、“人と組織を科学する”というテーマを軸に働いている。その関心の原点は、意外にも高校時代の野球部での経験にあるという。

「僕は高校の頃ピッチャーをやっていて、その時にすごく衝撃的な出会いがあったんです。トレーナーの方に、体幹トレーニングを教えてもらったんですよ。当時はまだ珍しかったのですが、それをやったら球速がなんと10キロ上がって。その方がやってたのは、ゴムを使ったインナーマッスルのトレーニングで、もともとは理学療法、つまりリハビリから来てるんですね。病気やケガで動けなくなった人を回復させる手法をスポーツに転用している。それを自分もやってみたら、パフォーマンスが一気に変わった。こんなに変わるんだと感動して、そこから体幹の重要性とか、インナーマッスルとか、メンタルのことも教えてもらい興味を持つようになりました。筋トレだけしてればいいわけじゃない。練習も、メンタルも、全部必要。そんな風に人をトータルで見て、構造を組むことがパフォーマンスにつながるんだと思ったんですよ。で、ふとなんでこういう考え方って、ビジネスの世界ではあまりないんだろう?と。ビジネスだって人が動かしてるじゃないですか。」

15年前、初めて人事の仕事に携わったとき、まさに同じような気づきがあったという。タレントマネジメントとは、人の情報をもとに適材適所を考えること。いかに個人の強みを活かし、組織として機能させるか。そのためには、人を理解し、活かす構造が必要になる。

「そういうのをちゃんと“科学”できれば、もっとみんな楽しく働けるようになるんじゃないかなって。今でもそう信じていて、それを自分自身で体現したいという想いが根底にあるんです。」

そんな中、SAPを離れるタイミングで、U-ZERO創業メンバーの三村真宗さんから声がかかり、立ち上げから参画することに。三村さんがコンカー時代に培ってきたエンゲージメントの知見を、新しい形で活かそうとしている姿勢に共感したという。

「人が会社にどう帰属し、どうやってモチベーション高く働けるかは、会社の肝だと思っています。人は“できること”よりも、“やりたい”と思えることの方が、より大きな力を発揮できると思うから。だからこそ、あの人ができるなら、自分にもできるかもしれないって、周囲に勇気を与えるような存在でありたいと思っています。ライブとか、野球の試合を観て“明日も頑張ろう”って思えるじゃないですか。あの力ってすごいですよね。表現者でなくても、そういう原動力を生み出すことはビジネスの場でもできると思っています。」

「僕の座右の銘は、『人に勇気を与えること』。僕がやってる姿を見て、自分もやれるかもしれないって、誰かが思ってくれたらいい。そういう連鎖を生み出せる人でありたいです。U-ZEROのチームは、みんな本当に尊敬できる人ばかりで、とても優秀。だけど不器用なところもあって、すごく誠実。僕ががんばっている姿を見て、自然と手を差し伸べてくれる。そんな人たちと一緒に働けているのが、何よりありがたいです。」

最後に、瓜田さんにとってInspired.Labとは?

「SAP時代からLabによく顔を出していた僕にとっては、ふるさとのような場所。代表の三村さんにInspired.Labの入居を勧めたのも僕です。自分たちだけで閉じこもるのではなく、ベンチャーや大手の方など様々な企業と関われるというのが決め手でした。いろんな価値観に触れたり、交流したりすることは、特に人や組織を扱っている僕らにとってはとても大事なこと。そういう意味でもこの場所が一番合ってるなと思いました。今後はもっと関わりを深くして、よりコラボレーションが生まれるようにしたいですね。たとえば、Labがより活性化していくために、何が障害になってるのかを見つけて、U-ZEROのソリューションを使いながら、会社の壁を越えてサーベイをやって、フィードバックを取り入れ、メンバー(入居者)含めみんなで運営の仕方も考えていくとか。運営も、コミュニティオーガナイザーやカフェスタッフだけではなく、いろんな会社から募って、テーマを決めて一緒にやっていくのも面白いと思うんですよね。そうやって新しいつながりや価値が生まれて、ここで働くのってモチベーション上がるよねと思えるような場にできたら、最高じゃないですか。」

2025.08.29

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