私たちは経済活動に寄与する新しいデータをとっている

『新しいデータによって、メディアマーケットを圧倒的に進化させる』。TVISION INSIGHTSは、独自の人体認識技術を用いてテレビの前に人がいるかどうかだけでなく、視聴者の視線、顔の向きから番組のどこで画面に注目したかといった視聴態勢「視聴質」を計測・分析している会社だ。この技術によって、毎秒レベルで計測したデータセットが広告主、広告会社や放送局に提供され、CM配信時間・メディア選定・CMクリエイティブを最適化することが可能となる。Inspired.Labメンバーの河村嘉樹さんはこのTVISIONの共同創業者で、取締役を務めている。

「TVISIONは2015年に創業しました。それまでテレビ視聴の計測方法は数十年も前からずっと同じモデルのままでした。アナログな計測方法ではテレビがついているかどうかしか分かりません。TVISIONの技術を用いると、テレビの前に人が何人いるか、いつ目線が向いているか、どのような年齢層の人が見ているかなど様々な場合分けが可能です。当たり前の話ですが、広告・CMというのは広く告げるために流してるものなので、テレビがついていてもしっかりと見られ認知されなければ意味がありません。弊社の最先端の人体認識技術を搭載したセンサーをテレビの上部に設置すれば、テレビの前にいる複数の視聴者の視線や表情を毎秒ごとに測定することが可能になり、そのデータを元にCMが本当に見られているのかという広告主の課題に答えるソリューションを提供することができます」

河村さんは大学を卒業後、外資証券会社2社で事業法人・金融法人に対する債券運用等の提案・販売に従事。持ち前のチャレンジ精神と好奇心から30歳を目前に、スケールの大きさに魅せられてミャンマーに渡り、金の採掘ビジネスに身を投じた。1年後に帰国したタイミングで、上海でデジタル広告代理店を起業していた友人の劉延豊さん、郡谷康士さんから声をかけられ、3人でTVISIONを創業した。

「視聴質データを取るということは全く新しい試みだったのでリスクはありましたが、先行きが読める人生は楽しくない。やはりチャレンジがしたいなと思いTVISIONの創業に参画しました。私は、最悪死ななければ大丈夫だと考える人間ですし、落盤の可能性もありえるミャンマーの鉱山の採掘現場を経験していましたしね(笑)。劉と郡谷から事業計画を聞いて、放送業界は情報の非対称性が強く、ガラパゴス化した時が止まった業界だと感じました。世の中はどんどん情報が見えるようになっているのに、テレビの世界だけが曇ったままというのはありえない。金融業界がそうであるように、情報の非対称性がある世界はいずれ非対称性が修正されます。情報格差がなくなることによってマーケットが大きくなる可能性を大いに感じました。このまま我々がやらなくても、いずれは誰かがやる。それならば、我々自身でやろうと強く思いました。劉と郡谷とは得意なことが被らないということもプラスでした。サイエンスな部分は彼らに任せて、私は営業や新規開拓などビジネスディベロップメント系のことをやることになりました。推進していくことは私の方が得意ですから。泥臭いことは全部私がやるつもりでした」

今や放送業界に広く知られるようになったTVISIONの視聴質データだが、凝り固まった世界に風穴を開けることは容易ではなかったという。

「大学の先輩や後輩に放送局や広告会社勤務の方がいたので、話を聞きながら業界のイロハを学ぶところから始めました。彼らがどういう思考で働いてるのかというところをまず理解し、どうすればテレビの業界に切り込めるのかを考えていましたが、最初は本当に苦労しました。とある会社のお偉方に3人で呼び出されて、君たちはテレビの世界をどうしようとしているんだ、君たちは性根が腐っているなどと罵られたこともあります(笑)。最終的には放送局も広告会社も広告主からお金をもらってるわけですから、広告主が変わらないことには業界が変わっていかないのだろうなというところに行きつきました。それから地道に広告主にコールドコールからアプローチをしました。昔から法人営業をやっていたので、そこには自信がありました。当時はまだデータも取れていなかったので、コンセプトをひたすら説明して、協賛してもらうよう愚直にお願いするしかありませんでしたが、。運よくリクルート、マクドナルド、ソフトバンクなどがクライアントになってくださり、そこから会社がようやく回りはじめました。はじめに大手の広告主さんが面白いと思って振り向いてくれたことはすごく励みになりました。それがなければ会社は存続していなかったかもしれないです。何度も言いますがCMは見られていないと意味がない。人は知らないものには興味を持てないし、買えないし、ダウンロードもできない。多くの人に知らせる手段としてテレビがあって、テレビCMでしか届けられない人がまだまだ一定数存在します。テレビで一切紹介されないで、日本全国の人が知っているものは電気・ガス・水道くらいのものですよ。やはりテレビは依然として経済を動かす大きなドライバーの1つなんです。CMが見られることで態度変容を促し、経済を活性化させることが重要だと思ってこの仕事をしています。TVISIONはただテレビのデータをとっている会社ではなく、日本の経済活動に寄与するデータをとっている会社なんです」

TVISIONは『新しいデータによって、メディアマーケットを圧倒的に進化させる』をミッションに掲げている。河村さんは活発な経済活動がもたらす未来についても思いを馳せる。

「私はサイエンスのことに詳しいわけではないのですが、地球がそろそろ限界に来てるんじゃないかと感じています。日本もだんだん亜熱帯気候のようになってきていますよね。そんな中で、今のようにビジネスをやっていていいのかと考える自分も実はいるんです。例えば資本主義と最近話題の脱炭素は、アクセル踏みながらブレーキも踏むようなものなので、どこかで破綻してしまう可能性も感じています。でも、やはり人間は経済活動をしないといけない。ミクロで見ると自分も家族も社員もいるのでビジネスを止めるわけにはいかない。この問題に対する全体解はおそらく存在せず、個人がそれぞれ考えながら進んでいくことが重要だと思っています。我々が経済活動をすることによって消費を促し、地球は消耗してしまうかもしれないのですが、そんなふうに人間は矛盾を抱えながら生きていくものなのかもしれない。だから、私はまずは周りの人間を大事にしなければいけないなと思っています」

-河村さんにとってInspired.Labとはどんな場所ですか?

「ここへ来る前は別の大きなシェアオフィスにいました。そこはそこでお祭りみたいな雰囲気が楽しかったのですが、我々には落ち着いた雰囲気があるInspired.Labの方が合っているかなと思っています。とてもしっくりくる場所です。落ち着いてはいますが、ただ静かなわけではなく他社のメンバーとの自然な交流があるのがいいですね。みんな様々な引き出しを持っていて話していて楽しい人ばかりです。早くここでお酒が飲めるようになって、以前のようにイベントができるようになって欲しいですね」

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