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シミュレーション技術で加速する製品開発の未来
Rescale Japan株式会社(以下、Rescale)は、企業がハイパフォーマンスコンピューティング(HPC)やクラウド上での物理シミュレーションを効率的に実行するための最先端プラットフォームを提供するソフトウェア・テクノロジーの会社だ。航空宇宙、自動車、製薬、製造、半導体などの幅広い業界で、セキュリティ、スケーラビリティ、財務管理を備えたソリューションを展開することで、企業の研究開発効率化に貢献している。Rescaleでソリューションズアーキテクトとして活躍する三島源生さんにインタビューを行った。
「実験を伴う調査は通常高コストになりますが、シミュレーションを使うことでリアルな実験を行わずに物理現象を理解でき、費用を抑えながら結果を得ることができます。たとえば、車を用意して衝突実験を行う場合、高感度センサーやカメラ、さらに人員の確保が必要で、準備に多大なコストがかかりますが、シミュレーションを使えば、車が衝突して潰れる過程を何百台分も再現ができ、結果が良好であれば、実験は最小限の回数だけ行えば済みます。研究開発部門は実験と計算を組み合わせることで、製品の市場投入の加速とコスト効率の向上を実現することが可能となります。」
三島さんが担うソリューションズアーキテクトとは、お客様の課題や要件に応じて、クラウドサービスの中から最適なソリューションを選び、それらを組み合わせて設計・提案をしている。シミュレーションの成功に必要な準備や、データの取り扱いに関する課題を一緒に検討し、解決策を提示するという点では、技術営業職(プリセールスエンジニア)に似ているが、ソリューションズアーキテクトは単に製品を提案するのではなく、技術面とビジネスの価値の両方を繋いで提案を行うため、お客様の業務効率の向上に貢献が可能になる。
「Rescaleの導入を検討している段階のお客様にアプローチすることが主で、対象となる分野は、宇宙、車、ライフサイエンス、エネルギー、材料工学など多岐にわたり、物理現象に関する知識が業界を超えて活かせることが特徴です。ただ、各分野に特有の知識が必要な場合も多く、対面やZoomでのお客様との対話を通じて情報を集めながら理解を深めています。お客様の多くは、研究開発部門などで自分の専門的な研究や開発業務を行っている人たちなので、Rescaleが提供するITソリューションに直接的な関心を持つ人は少なく、多くのビジネスメリットを考慮して構築したRescaleのワークフローに初めから合致する層を引きつけるのが難しいという現状があります。」
大学院でロケット燃焼を専攻し、燃焼流が発生する筒内の模擬実験をコンピューター上で再現する研究に取り組んでいた三島さん。子どもの頃から火が大好きで、これまでいろんなものを燃やして遊んできたと笑いながら話す。新卒では石油業界に入社し、ガソリンやオイルを生成する工場の設計を行うプラントエンジニアとして働いたのちに物理シミュレーションを扱うソフトウェア会社に転職した。その後Rescaleに入社し、今でもその情熱を絶やすことなく、スーパーコンピュータの力を科学的探求へと昇華させている。
「自動車業界では、もともと自前で大規模なデータセンターや高性能コンピューターを用意し、それを使って計算するのが一般的でしたが、クラウドが登場した2010年頃から状況が変わり始めました。当初のクラウドは数値計算には不向きでしたが、徐々に技術が進化し、利用可能な選択肢として注目されるようになったんです。Rescaleは2011年に設立されて、創業者はクラウド技術を活用して数値計算の新しい可能性を切り拓こうとしていました。当時はまだクラウドの性能が十分ではなかったのですが、技術の進化に伴って、クラウドが数値計算にも適したプラットフォームとして認められるようになっていく中で僕もその可能性に挑戦したいと思い、Rescaleに転職しました。外資系企業でのビジネスが面白そうだと感じたことも動機の一つです。」
Rescaleの特徴は、全てのシステムを自社で開発している点にある。他社にはない独自のアプローチが可能だ。それが面白い部分であり、だからこそソリューションズアーキテクトのようなポジションが必要になると話す三島さん。お客様の課題に応じた柔軟な対応が求められる場面も多い。
「 お客様の業務フローを正確に把握することは、信頼関係を築くために重要なプロセスです。会話だけでは業務の詳細が掴みにくいこともありますが、そういった場合には、システムのセットアップ状況やログを確認することで課題を見つけ、具体的な解決策を提示しています。いつでもお客様が困っている状況に真摯に向き合うことが大前提です。製造業のお客様の場合、新製品の開発スピードが特に重要で、競合より半年早く製品を市場に出すことが、有利なポジションを獲得するための鍵。そのため、コストよりもスピードを優先する場面もありますし、たとえば、リコール問題の解決や緊急解析では、どれだけ費用がかかっても迅速な結果が求められることがあります。」
これからやってみたいことは?
「正直具体的なアイディアはないのですが、今やれることをやっていこうという気持ちです。個人的なこととして、野望というほどではありませんが、大学時代にテーマを持って旅をするのは面白いのではないかと思い、『古事記』に登場する場所を訪れるという旅をしています。淡路島の離島である沼島をスタート地点にし、四国や九州へと進んでいて、全部で167箇所の地が登場するので、細く長く続けていける一生の趣味になりそうです。」
最後に、三島さんにとってInspired.Labとは?
「純粋に 『仕事に来るのが楽しい』と思える場所。Inspired.Labには、面白い取り組みをしている企業や、大企業の分野ごとに分かれて活動している方々が多く、話を聞くのが面白いです。個性的で興味深い方々とも出会えるのはとても刺激的です。」
2024.12.27