変化に強く、よりイノベーティブなカルチャーへ

AGCグループは、技術革新の歴史の中で培った世界トップレベルの技術を強みにガラス、電子、化学品、セラミックス、エレクトロニクスなどの事業領域でこれまで様々な価値創造に挑戦してきた。そして創業から100年を超えた現在も尚、革新的な技術、製品を追求し続けている。Inspired.Labメンバーの烏山純一さんはその新規事業育成を担う事業開拓部のマネージャーを務めている。

「事業開拓部は、MIT活動と呼ばれるMarketing、Incubation、カンパニーや新組織への事業Transferのプロセスによる創出活動を通じて新事業の提案と推進を行い、AGCの継続的な成長に貢献することを目指すコーポレートの組織です。 マクロトレンドから有望と考えられる分野の事業機会の探索に取り組むだけではなく、カンパニーやSBU(Strategic Business Unit)では検討の難しい案件の事業化検討の役割も担っており、社外の協業パートナー等とも連携しながら新事業の探索・提案・推進を行っています。 その活動は日本だけに留まらず、シリコンバレーや上海、シンガポールとも連携しグローバルな新事業開拓活動を展開しています」

烏山さんは長崎で生まれ育ち、大学ではファイナンスを学んだ。世界に誇る日本のものづくりに携わるべく材料、素材メーカーで働きたいと考え1991年にAGCに入社。以降現在に至るまで実に様々な経験ができたと語る。

「印象深いもので言えば、20代の頃に半導体の販売代理店事業で携わったシリコンバレーの半導体スタートアップ企業の日本事業立ち上げです。従業員20数名の小さな会社だったのですが、自分たちの強みを明確に定義し、戦略を立て、パッションを持って臨めば結果が出るということをそこで目の当たりにしました。会社、国を超えて協力し合うことでチャンスが作り出せるという体験を若いうちにできたのが自分の中ではすごく大きかったと思っています。また、2003年からは社費留学制度を利用してシリコンバレーのビジネススクールで2年間勉強してMBAを取得しました。英語があまり得意ではなく、本を読むのにネイティブの3-4倍の時間がかかっていたので、この2年間は朝起きて1日勉強して、夕方から授業を受けて、その後また夜中まで勉強するというのをひたすら繰り返していましたね(笑)。さらに帰国後はエレクトロニクス事業本部の立ち上げに参画し、組織ビジョンの策定プロジェクトを企画・遂行しました。ミドルマネージャーを36人集めて、経営陣にも入ってもらい、みんなで喧々諤々の議論をしながら組織の礎となるビジョンを作り上げ、運よくその年の社長賞を受賞することができました。その後、買収を担当したスイスのナノテク開発スタートアップのCEOとして経営も経験しました。そして、2017年から現在の事業開拓部でマネージャーとして働いています。開発した技術や事業を収益に繋げるという面ではまだまだ成功と言えるところまではたどり着けていないので、これからInspired.Labで刺激をもらいながら事業をつくり、しっかり会社に収益として還元できるようにしたいと思っています」

現在進行形で複雑になっていくVUCAの世の中において、材料だけをつくっている企業はこの先の事業が見通しにくくなっている。そのような状況の中で、重要性を増すのがオープンイノベーションと次世代のリーダーの育成だと烏山さんは語る。

「当社は建物の窓ガラスに使用する板ガラスを出発点として建築、自動車、テレビ、スマートフォンなど様々な用途のガラスを作り、さらに化学品やセラミックス、エレクトロニクスなど、時代の変化に応じて多くの事業を展開してきましたが、ご存じの通り昔に比べてテクノロジーの発展の速度が急激に上がり世の中が複雑化してきているので、メーカーはもはや『ものづくり』だけでは立ち行かなくなっています。素材や部品、ソリューションまでバリューチェーン全体に手を広げていかないと生き残ることが難しい中で、社外に目を向けパートナーと一緒にサービスまで含めてビジネスをつくっていく『オープンイノベーション』は必要不可欠なものになってきています。これまで当社はそういったチャレンジをあまりしてこなかったので、今Inspired.Labに入居している私が率先してやって見せることができればいいなと思っています。私はこの場所の良さがわかるし、どう使えばいいのかというのもある程度わかっているつもりなので、その価値を伝えながら多くの社員を巻き込み、協業のチャンスをつくり出そうという動きが会社全体から出てくるようにしたい。オフィシャルでやるために会社を説得することは容易ではないですが、若者からも新規事業にチャレンジしてみたいという人たちが結構出てきているので、彼ら彼女らに、業務外の時間に新規事業を体験してもらうためのサポートも、コミュニティや部活のメンターのような形でボランティアでやっています。次世代のリーダーを育てていく上で、失敗を恐れずに、新しいことにチャレンジする経験をしてもらうということはすごく重要で、私自身先述のシリコンバレーの半導体スタートアップと一緒に日本事業を立ち上げる経験を運よく20代でできたことが、その後の人生を大きく変えました。Inspired.Labを一つの機会として、志ある若者に、一度正解がないところに勇気を持って飛び込んで、ベストを尽くして取り組む中からリーダーシップを身につけていって欲しいですね」

世界的メーカーで数々の事業に関わりながら、実に30年もの間邁進してきた烏山さん。その目はどのような未来を見据えているのだろうか。

「『両利きの経営』という本があるのですが、両利きというのは既存事業をよりブラッシュアップしていく『深化』と、新規事業を育てるという『探索』の二軸を言います。日本の企業はどうしても『深化』の方に力が入ってしまいがちです。しかし、このVUCAと呼ばれる先の見えない時代において『深化』だけでは対応できず、今後はますます『探索』を強くしていく必要性がありますし、COVID-19を経験したことでそれがより顕在化し、変化に備えていくことへの意識が各企業、各個人共に確実に大きくなっています。私自身も自分が成果を出すだけでなく、若手社員とともに新規事業を創出していく中で、私がこれまで学んできた経験を伝えながら『探索』へのムーブメントを後押ししていこうと思っています。そして、当社を含めた日本の企業がより変化に強く、イノベーティブなカルチャー、決して会社の中だけを見るのではなく、外に飛び込んでいってビジネスのチャンスを生んでいくことが自分たちの将来をつくり出すために必要だということが当たり前に認めらるようなビジネスカルチャーに変わっていくことを願っています」

-烏山さんにとってInspired.Labとはどんな場所ですか?
「多様なメンバーが共通の志を持ち、お互いに学び合っているという点において、私が通っていたビジネススクールと似ていると感じています。留学中、勉強する時はいつも決まって音楽がかかっている学校のカフェに行っていたのですが、今Inspired.Labで入り浸っているのもやはりカフェです。ここのカフェにはレコードしかかけないという面白い縛りがあるので、当時のカフェでよく流れていたマルーン5のアルバムをレコード屋で探し出し、個人的に寄付して時々かけてもらっています」

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