遠隔就労社会の未来を拓くプラットフォーム
−テクノロジーの力で誰もが平等な社会参画を目指す−


『すべての人が時空を超えて働ける世界へ』。株式会社ジザイエ(以下、ジザイエ)は、リアルタイムの遠隔就労を支援するプラットフォームJIZAIPAD(ジザイパッド)を開発・運営する会社だ。工場や建設現場などの遠隔就労環境を整備し、エッセンシャルワーカーやブルーカラーワーカーなど、職種に関係なく誰もがいつでもどこでも社会参画できるような世界を目指している。ジザイエが注力するのは、機械やロボットを意のままに動かすことでまるで現地にいるかのような環境を実現できる『人機一体』の技術。代表取締役CEOである中川純希さんにその取り組みやビジョンについて伺った。


「ジザイエが最も得意とするのは、0.1〜0.2秒程度の遅延でリアルタイムに高画質な映像を送る技術。遠隔就労化において、ロボットやドローン、カメラをおくだけでもソリューションのひとつとなりますが、それらの機械を遠隔操縦するためには臨場感を高く感じられる高度な映像伝送技術が不可欠です。その高度な映像技術を持つ会社は他にないので、実際に見てもらうと感動してもらえることが多いです。ジザイエでは、現場仕事の遠隔就労化のためのシステム開発やロボット導入するところから取り組んでいますが、ロボット操縦技術を手がけるスタートアップは他にも多いので、パートナーシップを組んで、お互いの得意とするものを掛け合わせることで様々な業種に展開しています。例えば、Inspired.Labに同じく入居する株式会社竹中工務店(以下、竹中工務店)とは、竹中工務店さんが持つタワークレーンの遠隔操縦システムと、ジザイエの映像技術を掛け合わせて新たなサービスを展開しています。」


東京大学・大学院にてロボット工学の研究を行い、介護・医療の領域での事業を作りたいと考えていた中川さんは、新卒で株式会社リクルートホールディングス(以下、リクルートホールディングス)に入社。グループ全体の新規事業開発を担当するMedia Technology Labに所属し、マーケティング・ディレクターに加え、経営企画を3年半務めた。退社後は、CtoCのスマホアプリを開発/運営する会社を共同創業し、CFO兼マーケティング責任者として、創業時の資金調達を推進、軌道に乗せたタイミングで退任した。

「研究者にならずリクルートに入社した理由は、大学・大学院で研究開発したシステムを広めるための事業の作り方を学びたいと思ったからです。その後、会社を立ち上げることを決意したのは、元々介護・医療の領域で新規事業を作りたかったからという理由だけではなく、大学で研究されている先端技術がなかなか世に出ていかないもどかしさをどうにか乗り越えたいという背景もありました。学術の世界では、研究成果の論文を書いて終わりということも多く、良い技術がきちんと社会に役立てられる仕組みを作っていかなければならないと考えていたのです。」

そんな中、東京大学 先端科学技術研究センターの稲見昌彦教授との出会いにより、2019年4月に稲見・門内研究室(以下、稲見研)に所属することになる。JST ERATO(国立研究開発法人 科学技術振興機構)の「稲見自在化身体プロジェクト」の他、民間企業との共同研究等、多くのプロジェクトを抱えていた稲見教授のサポートをしながら、研究成果をプロダクトとして事業化することを目的に据えていた。

「AIやディープラーニングの研究拠点として知られる東京大学の松尾豊教授が、AIのベンチャー企業を多く生み出している様子を見ながら、稲見研も同じようにエコシステムを作ることができるのではないかと考えていました。しかし、JST ERATOは基礎研究が多かったこともあり、実際にエコシステムを作ることは道半ばに終わってしまった感覚がありました。これまでのプロジェクトをサポートをする立場から、今後はエコシステムの構築だけではなく研究開発も自分自身で行おうと思ったことがジザイエの立ち上げに繋がりました。」

遠隔就労化は、JST ERATOプロジェクトのテーマのひとつであり、稲見教授との企業訪問や講演活動を通して、社会の要望に合致するテーマだと感じたと中川さんは話す。また、自身が病気で入院した際に感じた想いもジザイエの使命と強く結びついている。

「病気で長く入院していた時期があったのですが、同じ病室の方々と話をする中で、ほんの少しでも身体感覚が失われると仕事ができなくなる人がたくさんいるということを知り、遠隔就労化の課題がより生々しく感じられました。現場に行けなくても自分のスキルが役立てられるということは、本人だけでなく社会にとってもポジティブなエネルギーになりますし、遠隔就労化が進んで、ブルーカラーワーカーやエッセンシャルワーカーと言われている方々の仕事が全てホワイトカラーワークとして捉えられたとしたら、働き方や仕事の選択肢はもっと広がるのではないかと思っています。」

ジザイエの遠隔就労化への取り組みは、建設業や製造業に限らず、農業や酪農など広範な分野を探索しながら広がっている。規模も様々で、小規模農園から大手企業まで、困難な状況にある現場の度合いと資金の面を考慮しながら事業展開を進めているという。

「現状、遠隔化が一番進んでいるのは建設業です。その次は製造業ですが、全ての作業をロボットで行うのはまだ難しいため、現段階では設備の点検を遠隔で行うところから取り組み始めています。実際の現場は、通信インフラが整っていなかったり、ロボットやドローン等の機械を動かせるような場所がなかったりと、JIZAIPADの受け入れ体制が整っていない場所が多く、現場のインフラを整えるところから始まります。そのため、提供できるソリューションが局所的になってしまい、現場全体の遠隔化は想像以上に時間がかかりそうだと感じています。個々の現場の課題に対応することも一部必要ですが、できる限り共通の技術やシステムに落とし込むことで、業界に広くアプローチできるような遠隔化を進めていきたいです。」

それでもできることはまだまだたくさんあるとポジティブに話す中川さん。JIZAIPADによって遠隔就労化が広まった先に、どのような未来を描いているのだろうか。

「育児中の親御さんや高齢の方、障害を持つ方など、遠隔であれば働けるという方々はたくさんいます。単にビジョンを描くだけではなく、事例をひとつひとつ積み重ねて証明していく必要がある。最終的なゴールは、日本での遠隔就労化にとどまらず、世界、地球規模に展開していくことです。例えば、雪国の除雪車を海外の方に遠隔で操縦してもらったり、宇宙にある重機を遠隔で動かして建物を作ったりと、今後需要のある産業にも広げていきたいと思っています。」

最後に、中川さんにとってInspired.Labとは?

「会社をいくつか経営してきた中で、『ここで仕事をしたい』と思えるオフィスとはなんだろうとずっと考えてきました。今は働き方を選びやすい時代になってきていますが、やはり同じ空間で仕事をすることにより熱量が高まるのは間違いないと思います。私たちがInspired.Labに入居する理由はまさにそこにあり、ここに来れば他のスタートアップ企業や大企業の方々をはじめ運営スタッフさんなど必ず誰かがいて、様々な方とコミュニケーションを取りながら情報交換することができるコミュニティがあります。特に、我々のような駆け出しのスタートアップはどうしても視野が狭くなりがちなので、そんな僕らをコミュニティ全体で家族のように包み込んでくれる場所だと感じています。」

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