微生物×社会課題から、地球・社会への貢献を目指す
「今ある社会課題を、未来に残さない。」際立つ技術と品質により、「住・社会のインフラ創造」と「ケミカルソリューション」のフロンティアを開拓し続け、世界の人々のくらしと地球環境の向上に貢献する積水化学工業株式会社(以下、積水化学)は、2021年より新たに新事業開発部内にイノベーション推進グループを設立し、新規事業の創出に取り組んでいる。2023年度からは、積水化学グループ全社員を対象にした新事業提案制度「C.O.B.U.アクセラレーター」を運営し、新規事業創出に取り組む人材育成に加え、文化醸成にも取り組んでいる。イノベーション推進グループに所属し、新規事業の企画創出を推進を担当する成田琴美さんにお話を伺った。
「イノベーション推進グループには、新規事業提案制度の事務局である『C.O.B.U.アクセラレーターユニット』と『イノベーション創出ユニット』があり、イノベーション創出ユニットには、社内外連携による新規事業創出を進めるオープンイノベーションチームと、自ら新規事業企画を行う企画創出チームの2つチームがあります。前職で、新規事業に近い新製品開発や既存の微生物の培養方法を改良する仕事を担当していた経験から、私は企画創出チームで仕事をしています。積水化学に入社した2022年は、微生物の培養技術の研究開発を担当し、2023年4月から新規事業の担当になりました。今は新規事業の事業化を目指して活動しており、企画している複数の事業案を検討している段階です。」
微生物に関する研究に長年携わってきた成田さん。微生物への興味を抱いたきっかけは、高校時代、放課後によく立ち寄っていた輸入食品店ジュピターで、ナチュラルチーズを購入した時のこと。牛乳がチーズへ、米が日本酒へ、大豆が醤油・味噌へ、ものによって味がそれぞれ変化する発酵食品の面白さに惹かれ、理系の道に進むことを選択。研究を通して、肉眼では見ることができない微生物への関心を深めていった。
「元々は国語や歴史が好きで文系を選択していたのですが、父から『理系の実験は、家ではできない。』と言われたことに背中を押され理系に転じ、大学は農学部生物機能化学科に進学しました。その後微生物の研究室を選びましたが、乳酸菌の研究と大腸菌を使いアミノ酸を作る研究で迷い、選択は教授に委ねることに(笑)。大学修士課程までアミノ酸発酵の研究を続けました。」
卒業後、微生物の研究ができる企業の面接を受け採用には至らなかったものの、縁があって入社した会社で偶然微生物と関わる仕事ができることになった。5年ほど微生物利用の研究開発の商品化・販売に携わった後、既存の培養方法の改良研究を担当。そこから物質生産=バイオマニュファクチャリング(微生物にエサとなる物質を食べさせ、人間に役立つ物質を排出させることで、資源の取り合いを防ぎ、持続可能な社会の実現を目指すこと)の道に進むことになる。
「新卒で入社した会社は微生物メインの企業ではなかったからこそ、『微生物といったら成田』というポジションを確立できたと思います。微生物研究のジャンルでは、衛生上の観点から微生物を『殺す』手法の研究も多いのですが、私は、微生物を『使う』アプローチによる社会課題の解決を目指しています。積水化学でも、資源循環社会の実現を可能にするため積水バイオリファイナリーの技術研究を強化しているところで、生物触媒を活用し、可燃性ごみをエタノールに変換する技術の実証と事業化に向けた取り組みを行っています。」
積水化学に転職しイノベーション推進グループに配属した後は、正解がわからないことや先が見えないことに不安を感じていたという成田さん。今も未来をすべて見通せているわけではないものの、どのように動けばどのような結果に結びつくのか、どうすれば企画に活かせるのかを体感しながら学んでいったという。
「新規事業の企画創出を一人で行っていくので、不安になることも多かったのですが、困ったときはまず誰かに話すようになりました。相談する人によっていただける言葉が違うので、選択肢が広がり、先が見えなくてもやってみたら何かしらの結果が得られることも分かってきました。いま実感しているのは、業界や新規事業の作り方、ネットワークキングなどこれまで私が知らなかったことに触れられ、研究とはまた違った面白さがあります。ただ、新しい分野を知ることは研究職と通じる部分があり、新しいことを学び、知識を増やし、今の業務に活かしたいという思いは、関わる業界が変わっても私にとっては変わることのない普遍的なものです。」
成田さんが目指すのは、微生物の力を生かし、地球や社会に貢献する「微生物×社会課題」の世界。新規事業開発を通じて、今私たちが生きている世界をより良くしたいと語る。
「世界を良くする方法は色々あるけれど、微生物の研究を活かした事業作りをしている人は少ないので、自分だからできるアプローチの方法だと思っています。それにやっぱり、微生物が好きなんですよね。前職では技術にしか目がいっていなかったこともあったので、研究とは違い技術にこだわりすぎてもいけないということが難しさだなと思っています。」
最後に、成田さんにとってInspired.Labとは?
「会社ではないけれど、職場であり大切な場所。私が積水化学に入社したタイミングが、ちょうどCOVID-19の流行と重なっていたり、部署メンバーそれぞれの活動場所が異なっていたりする中で、Inspired.Labに行くと、必ず誰かに会えて、仕事の悩みから世間話まで、色んな話ができることが楽しいです。MeetUpやランチタイム中も人と話す機会が多いので自然と知り合いが増え、さまざまな人と壁打ちやヒアリングをしながら企画を前に進めることができています。偶発的な繋がりや出会いから、勉強になったり新しいアイデアが生まれたりすることもあるので大変助かっています。あとは、ポジティブで『Yes, and』のスタンスの人が多いので、アイデアを話した際には無理だよと言われず、そのポジティブが伝染する感覚が得られるのも居心地が良いですね。『職場に行くのが楽しい』という感覚が得られる、精神安定の場所だと感じています。」