21世紀は「 生物 x IT」の時代
LPIXEL株式会社 島原佑基

 医療、製薬、農業などライフサイエンスにおけるデータは多様化大量化し、特に生物はその複雑さを極めると言われている。LPIXEL代表の島原さんは、大学院の生物画像解析の研究室の仲間とLPIXELを2014年に立ち上げた。現在社員は約60名。AIによる医療画像解析を得意とし「ライフサイエンス x 画像解析」を軸に、医療業界のみならず大量に蓄積されたデータの解析を施し、新しい真理を探求している。バイオイメージ・インフォマティクスという生物画像解析の経験やノウハウがあるため、従来は分断されがちな生物、工学、情報の垣根を超えて融合的、学際的にワンストップでソリューションを提供することを強みとしている。

 興味のあることを限りなく探求していくのがサイエンティストならば、自分はどちらかと言うと興味のあるもの同士をうまく組み合わせてエンジニアリングする思考が強いと語る。高校生の頃に抱いていた夢は車を設計すること。枯渇資源を使用し交通事故も多い点から、21世紀は自然エネルギーを使った自動運転の車になると想定していた。物理化学や機械工学を学ぼうと大学受験に備えていた矢先に、山中教授のiPS細胞の発見が話題となり、これからの時代は生物が最も革新的な時代になるかもしれないと感じたという。どうせやるなら一番革新的なことをしたいと思い、進路を急転換した。大学から生物学を学び、学部では遺伝子工学を研究したものの、生物を作りだすことはそう容易いものではないと知る。2003年にヒトゲノム計画が完了し、一つ一つの遺伝子の配列は解明されたが、それぞれがどんな機能を果たしているのかはまだ完全に分かるには至っていない。車で言うならばエンジンやパーツなど、人間の身体を構成する細胞、遺伝子の全機能が分かっていない中で、生物自体を設計できる時代が訪れるのはまだまだ先の話であると感じた。

 化学、物理、生物の中で最も情報量が多く、複雑な構造を成しているのが生物。19世紀は化学の時代、20世紀は物理の時代だった。そして、生物が21世紀までそこまで発展してこなかった理由は、生物の膨大な情報を処理する情報科学の発展がなかったためだろうと考えていたところ、20世紀後半にコンピューターが登場し、21世紀は「生物 x IT」の時代になるという確信が芽生えた。AIは、画像認識、分類が一番得意と言われ、実用化が早そうなものとして「画像解析」に注目し始めた島原さんは、大学院から生物画像解析に転向し「生物 x 画像解析」で実績を築いていった。学生のうちに起業しようと考えたものの、まずは社会について学ぼうと、当時はグローバル展開に拍車をかけていた成長産業のソーシャルゲーム会社に入社し、事業戦略部に配属された。その後は同業の会社に転職し、海外事業部で働きながら副業で大学院時代の研究室の仲間と共に抱えきれないほどの共同研究をするために会社を創業することを考えた。生物画像解析のニーズがあることは自明であり、研究室だけでやっていても埒があかなくなった2014年、エルピクセル株式会社を設立した。立ち上げから2年弱は前会社に所属しながらも代表を務め、さらなる人員が必要になったタイミングで島原さんはLPIXEL一本に絞ることにした。

 数年前に話題になったAlphaGoというコンピュータ囲碁プログラムが、人間が思いつかない一手を打ち出したことに島原さんは驚いたという。人間よりコンピューターは瞬時に大量の情報処理ができる。今まで人間の目が見落としてきたデータが実は重要で、そのデータによって医学領域でも新しい診断基準を作っていくことができるのではないかと模索している。一方で、コンピューターが人間に完全に置き換わることはないとも考えている。医学部の先生と今後の医学をどうしていくべきかと話すことがあるそうだが、新しい診断基準ができたとしてもコンピューターと上手く付き合っていくことが重要だという議論になるという。例えば手術を受ければ90%は治るが後遺症が残る選択肢と、10%しか成功確率はないけれどほとんど以前のような状態に戻れる選択肢がある場合、後者を選択するには医師が患者さんに寄り添ってコミュニケーションをとっていくことが大切になる。どんなに優れた新しい診断基準がコンピューターによって生み出されたとしても、最後は必ず人間らしさが医学界においては要となる、と島原さんは語る。

 代表として日々働く傍ら、島原さんは2016年4月に大学院に入学、昨年博士過程を卒業した。週末に趣味や好きなことをすると仕事とのメリハリが付くのと同じように、島原さんにとっては学問が仕事とのメリハリを付ける効果をもたらすのではと考えた。この春は芸大の通信講座を受けたものの不合格となり、来年再チャレンジするつもりだそうだ。特にアメリカでは、MBAのロジカルシンキングによって生まれるものは誰が考えてもだいたい同じようなものができ価値が付けづらく、クリエイティブやアート思考から生まれるものに対して時価総額がが出ているそうだ。経営にはデザインが必要だという潮流によって、MFA(Master of Fine Arts)を学ぶ人が増えているとも言われてる。島原さんも、デザインやクリエイティブな思考によって医療、製薬の業界を設計できたら、きっともっとワクワクするものができるはずと考えている。島原さんは来年の春には芸術を学び始め、新たなイノベーションを試みていくはずだ。

―島原さんにとってInspired.Labとはどんな場所?
「Inspired. Labのレイアウトを決める前の段階から、Tomy Kの鎌田さんの紹介で月に1回以上意見交換をする場に参加をしており、ハードも大事ですが何よりソフトが大事だと伝えていました。実際にミートアップなどのイベントを企画してくれることはありがたいことだと感じています。 カフェやラウンジがあることで人が自然と集まり、その周りの人を介して繋がるセレンディピティがあり、偶発的な発見は全く関わりのない人と話すことで生まれたりもします。イノベーションを起こす場所としては、理想的な場所と感じています。」

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