事業排出物処理のプラットフォーム化で、日本産業の発展とサステナブルな社会を目指す。


「私は自分が欲しかったものを作ろうとしています。このサービスがあったらきっと苦労していなかったなと思うから。一番のモチベーションは、世の中にないものを作っているということですよね。」

「今日のあたり前」を支え、「明日のあたり前」をリードする。ENEOSグループが、グループの掲げる理念を実現するための「決意」として、今年5月に発表した言葉だ。脱炭素・循環型社会という「明日のあたり前」を実現するために、ENEOSグループでは、変化を楽しみ、多様な人・技術・アイデアの掛け算で新たな領域に挑戦している。その取り組みの一環であるChallenge Xは、所属や役職に関係なく誰でも応募することができる社内ベンチャープログラムだ。最優秀賞受賞者はENEOSグループで、新規事業開発を担う未来事業推進部に異動し、専門家からのフィードバックをもらいながら事業化を進めることができる。2022年度のChallenge Xにて、『~つなぐ、つなげる~循環型社会の形成を促す事業排出物処理のマッチングシステム』Vena(ヴェーナ)にて最優秀賞に選ばれた遠藤一郎さんにインタビューを行った。

「Venaの目的は、排出事業者に排出物の最適な処分方法をレコメンドする排出物処理プラットフォームを構築すること。Venaはイタリア語で「静脈」を意味します。ENEOSは日本を代表する石油会社で日本産業界を支えるいわば動脈のような存在ですが、その産業活動で発生した事業排出物を整った流れにする静脈のような存在になりたいという想いを込めました。2025年には、産業廃棄物として取引される半分がこのプラットフォーム上で行われることを目指しています。」

「事業排出物は、引取事業者に産業廃棄物として処分されるか有価買取をしてもらうかの二択なのですが、その多くが産業廃棄物として処分されています。できる限り有価買取をしてアップサイクルしたり、産業廃棄物となってもリサイクルされて使われたりと、最終埋立てに回るものを最小化したいと思っているので、私たちは、『産業廃棄物』という言葉をあえて使わず『事業排出物』と言っています。」

大学で触媒化学を専攻し、新卒でゼネラル石油株式会社(現ENEOS)に入社した。研究者として新規化学プロセスの開発を約3年半行った後、堺製油所に異動しプロセスエンジニアを3年間務める。そして、全く異なる分野である小売営業部門へ配属されることになった。

「技術職の業務の終盤に、上司から『お前は技術職よりも営業職に向いている』と言われて、小売営業部門に配属となりました。実は私は技術ではなく商売をやりたかったんです。街中のSSに行って営業をしていたのですが、それがすごく楽しかったんですね。その後、1999年に調達購買部門に異動し、遊休施設の解体撤去及びその跡地の土壌浄化を担当しました。当時から、石油業界では汚れた土の廃棄が問題になっていて、土壌浄化が広いテーマとなっています。扱う分野は都度変わるので毎度勉強、勉強です。当時の旧東燃ゼネラル石油は、米国企業の子会社だったので、教育もアメリカ式。調達購買部門に来てからは本当に沢山の学びと経験をさせてもらいました。」

そして2012から2019年の間、社内の排出物処理のコスト削減の業務を担当。遠藤さんはENEOSの年間排出物処理コストを4割近く削減することに成功し、新たなビジネスチャンスになると考えた。

「これだけの排出物処理のコスト削減が実現できたので、このノウハウは他社にも必要としてもらえるだろうと考えました。Venaは産業廃棄物に関わる三者【①排出事業者 ②運送業者 ③引取事業者(産業廃棄物or 有価買取)】を繋げる方法を考えたサービスです。排出事業者の排出物情報を引取事業者から産廃処理もしくは有価買取の見積を取得し、さらに運送事業者から運賃の見積を取得し、二つのデータを合算することで、産業廃棄物か買取かが適切に判断し、排出事業者に最適な見積りを提案できる仕組みになっています。」

産業廃棄物業界は、DX化の余地があるビジネスエリアだと長らく言われてきたが、ほとんど手がつけられていない状況にあるという。水面下では、行政や大手他社でVenaと同じ様なサービスに取り組んでいるようだが、Venaにしかない強みとは一体何なのか。

「排出側と産廃側の両方で公平な目線を持てる人がいないんですね。ENEOSがこの事業に取り組む意味はそこにあって、ENEOS自体が巨大な排出事業体だということ。現在ビジネスモデルの確からしさについて検証するため、試験的なマッチングサービスを提供しているところですが、既に数社から依頼をいただいて、その他30社ほど参加の希望をいただいています。温室効果ガス、国内最終廃棄処分場の問題、カーボンニュートラル等々、産業廃棄物事業は非常に不効率な世界ですが、日本産業界が成長していくために、Venaを通して自分たちの志を実現していきたいです。Challenge Xは、2年間で事業化の目処をつけないといけないので頑張っていきたいですね。」

最後に、遠藤さんにとってInspired.Labとは?

「仕事の拠点であり、家です。Inspired.Labは、。新しいことをやる上で、不可欠な空間です。」

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