NFTで世界と地域を滑らかに繋ぐ ー 不動産NFTとWeb3の世界からー


株式会社レシカ(以下レシカ)は、ブロックチェーン技術を活用しアナログ資産をトークン化することで、デジタル世界でも現物価値の管理・共有ができるプラットフォームシステムを作るWeb3の会社だ。ウイスキー樽のNFT化、正規IP(=知的財産)の認証・登録サービスの提供、デジタルコンテンツの販売など、様々な権利に紐付く資産をデジタル上で安全に管理できるようサポートを行っている。空き家物件を改装して作られた別荘に紐づいたデジタル物件のNFTを販売するサービス「ANGO」の運営を担当する大歳さんにインタビューを行った。

「私は、事業開発・営業・マーケティング・DAO(=コミュニティ)運営など、ANGOに関わるほとんどを担当しています。元々レシカは、UniCaskというウイスキー樽のNFT化事業から始まり、お酒(ウイスキー)と同様に時間が経つと価値が上がる資産である不動産に注目し、ANGOが立ち上がりました。ANGOのNFT所有者は、デジタル物件にNFTアートを飾ることや、デジタル物件と連動した別荘に宿泊する権利、所有者限定のイベントや物件の運営に関与するDAOに参加する権利が得られます。現在物件は那須、熱海、九十九里、京都、渋谷と5軒あり、継続的に人が入る事業にしていくべく健闘中です。」

NFT事業におけるDAO運営とは具体的にはどのようなことをしているのか

「DAOのメンバーが話せるような場をオンラインで整えたり、物件の周辺に住んでいる地元の方々を巻き込んでイベントを開いたり、様々な方法でコミュニティの運営をしています。集客はX(旧Twitter)やFacebookなどのSNSはもちろん、物件の近所に住んでいる方々に挨拶をしたり、商店街に通ったりと、一つ一つのご縁を大事にして少しずつ広げています。DAOを作る一つの目的は、地元で新たな雇用を生み出すこと。実際に九十九里の物件では、地元の商店で紹介してもらった人が空き家の清掃に入ってくれているんです。熱海のコミュニティでは81歳のおじいさんが参加してくれているのですが、高齢で元気だけど雇用がなくエネルギーを持て余している方も多い中で、この場所で新しい生きがいが生まれているというのは嬉しいですね。物件は、地元の方やInspired.Labのメンバーさんからの紹介など知り合いづてに購入しています。」

地方ではNFTへの理解がない人も多いことが懸念されるが、その点についてはどのように考えているのだろう

「私はDAOに関わる全員がWeb3やNFTを意識しなくても良いと考えています。DAOを作っていく裏側でもちろんNFTは動いていますが、私たちの目の前で起きていることは人との繋がりや交流です。そのリアルな部分を大切にしたいのです。弊社のNFTは、普通の通販サイトで買えるような仕組みにしていて、DAO内でNFTを意識しなくても良いようにデザインされています。また、基本的にWeb3のやりとりはDiscordで行うのですが、地元の高齢者は扱えないのでLINEを使っていて、気軽に関わることができるような柔らかいコミュニティの入り口になるように設計しています。楽しそうだから入ってくれるくらいの感覚で参加して欲しいですね。」

中学生の頃はイベントを企画することが大好きで、文化祭でお化け屋敷やドッチボール大会などを開催していた大歳さん。高校卒業後、京都の芸術大学に進学し、フリーランスのデザイナーとしてグラフィックやWebの仕事もする中で、ひょんなきっかけからWeb3の世界へ足を踏み入れることになる

「大学4年生の時に、とあるNFTプロジェクトでデザイナーとして関わったことを機にNFTに興味を持ち始めました。その後、NFTプロジェクト『ベリーロングアニマルズ』が始動した時期に、そのキャラクターを使ったジェルネイルを作ってXでシェアをしていたら、それがプロジェクトのファウンダーの目にたまたま留まったんです。そこからデザイナーとして関わることになりました。当時私は、就職活動をしていなかったのですが、興味があることには取り組んでいて、フリーランスとして仕事もしていたので、目の前と向き合った結果フリーランスという働き方になった感じです。学生の時に起業しようと思っていた時期もありましたが、その時から『自分で動かないと何も進まない』という感覚があり、それは今も仕事で通ずるマインドになっていると思います。」

その後ベリーロングアニマルズを離れ、2022年の11月にレシカに入社。その出会いは、実はInspired.Labだった

「ベリーロングアニマルズとUniCaskの合同イベントがInspired.Labであったのです。当時NFTが出始めたばかりで、NFTにありえない金額がつけられていたり、儲けだけを考えて参入する人がいたり、結局何にお金を払っているか分からない状態になっていました。キーワードだけが切り取られているような感覚に疑問を感じながら自分もNFTアートをやっていたので、お酒というきちんと裏付けられたアナログ資産でNFT事業をしているUniCaskに興味を持ったんです。ビジネスのスキームや会社の思想に未来を感じて入社を決めました。」

大歳さんが話すようにNFTは実態が掴みにくいと感じられることも多い。初期からNFTに関わってきた大歳さんが感じるWeb3業界の難しさや面白さとは

「Web3は流れが早いので、会社がどこに向かっていて、課題がどこにあるのか探しながら自分がするべきことを常に考えています。ANGOはまだ始まったばかりなので、大きな結果は出せていませんし、焦りを感じることもあります。熱海の物件の庭をNFTで分割して、畑の権利として売り出すプロジェクトを進めていて、それはとてもわくわくしながらやっています。大学で京都に住んでいた時に、地域の方々と一緒に畑で野菜を育てるという活動をしていて、収穫したものをみんなで一緒に食べる経験がとても楽しかったので、熱海でもそのような体験を作りたいと思っています。ANGOでは、都内に住んでいて地方に来られない人もDAOに参加できるように、例えば地元の人にANGOトークンを送って畑のお世話を依頼するなどの形でコミュニティが循環するようなエコシステムを作っていくつもりです。」

ANGO、そして大歳さん自身の今後の展望は

「クリプトの面白さのひとつは、先進国も発展途上国も同じ通貨を扱えるということ。そして、それらのやりとりがスピードを持っているということです。法定通貨では、国際決済に時間がかかりますが、クリプトの決済は一瞬なのでお金の動きが滑らかなんですよ。私はそこに可能性を感じています。以前働いていたコミュニティでは、ナイジェリア人が自分のお姉さんの結婚式に行くためにNFTを売って、得たお金でビザを買い渡航をしていました。ナイジェリアでは1/3の人にウォレットの開設がされているようで、発展途上国では国の通貨に信用がない場合があるので、NFTが日常的に使われています。ANGOでは、日本の空き家だけではなく海外の物件も再生していくことで、発展途上国の人にもお金が流れるような循環を作れたらいいですね。」

「そしてもう一つは、NFTに関わる人口はまだまだ少なく、法整備が不十分なところも多いので、社会実装が進んでいけばいいなと思っています。そして、クリプトエコノミーでの『分散的』な考え方を基に、例えば、代表や私がANGOからいなくなって、レシカという会社が無くなった場合でも、DAOによって空き家が自動的に再生され、活性化されるという状態まで事業を育てていきたいと思っています。自分の思いを発信して、ANGOの思想が残り続ける生命体のようなものを作っていくことで、物件が果てることなく、DAOも循環していく未来を目指しています。」

最後に、大歳さんにとってInspired.Labとは

「それこそメンバーさんに不動産を紹介していただいたり、事業の壁打ちをしていただいたり、入居企業とNFTのプロジェクトで何かご一緒できないかという話をさせていただいています。Inspired.Labでは、いろんな企業の方々との繋がりやビジネスのアップデートの機会をいただけるのでとてもありがたいです。」

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