「衛星データの活用により地球の未来を切り開くー 先端テクノロジーと伝統文化に共通する精神性からー」


株式会社スペースシフト(以下、スペースシフト)は、AI技術を使って地球観測衛星のデータ解析技術を開発する宇宙ベンチャーだ。SAR(合成開口レーダー、Synthetic Aperture Radar)と呼ばれるレーダー衛星は、雲を透過するため、天候に左右されない。SAR衛星データをAIによって解析することにより、建物、農作物、船舶等の物体やその変化など、人間の目では見えにくい情報を自動的に抽出することが可能となる。スペースシフトの事業開発担当として働く、Inspired.Labメンバーの多田玉青さんにインタビューを行った。

「私たちの強みの1つは、クライアントへのヒアリングを通して課題に沿った技術を提供していることです。技術ドリブンに偏らず、社会が本当に必要とするニーズに合わせて衛星データの解析技術の開発を行っています。エンジニアがメインの会社ですが、私は、企業や自治体、政府の方々と実際にコミュニケーションをとり、解析技術の活用方法やビジネスプロセスの最適化、持続可能な社会の実現にどのように貢献できるのかという提案などを行っています。」

「SAR衛星の特徴の一つは、悪天候でも夜間でも地球の対象物を観測できることから、連続的なモニタリングが可能であるということです。そうすることで、例えば、農家さんが農作物の生育状況を常時確認することができるようになります。さらに、継続的なモニタリングによって、収穫や出荷時期の「予測」が可能となります。この技術を活かして、弊社ではマーケティングへの活用にも積極的に取り組んでいます。例えば、農作物の収穫時期の予測データを用いることで、農作物が出荷される時期、つまり販売価格が下がる時期を推定し、その時期に合わせて関連する食品(調味料など)のテレビCMなどを打つことで、購買促進に繋げる試みを行っています。農業での衛星データの活用はこれまでも行われてきましたが、マーケティングへの活用は世界的に見ても非常に面白い応用例です。この技術により、需給やサプライチェーンの最適化も目指しています。衛星は、一括で広範囲を撮影することができるため、様々な分野での利用が見込まれており、エネルギー、建設、運輸、港湾、環境などの分野で活用が進んでいます。」

多田さんは中学校2年生から新興国での仕事に興味を持ち、その頃は主に貧困問題に関心が向いていた。次第に、地球温暖化や気候変動についての興味が高まり、大学は理学部物理学科に進学、地球温暖化を科学的に解明する研究室に所属する。そして、気候変動や環境問題が人々に与える影響を研究するべく、大学院で国際協力の分野に進んだ。

「幼少期から家庭の中で国際情勢に触れる機会が多くあり、自然と関心を持ちました。中学校2年生のときには、新興国で働くキャリアについて考えていましたね。新卒では、途上国やグローバルサウスの国々への開発協力を行うコンサルティング会社に入社し、気候変動対策などを専門に10カ国20都市以上で様々なプロジェクトに従事しました。実際に地元の政府や企業と話し、様々なテクノロジーや政策立案、教育を含む課題解決のアプローチを模索する中で、やはり優れた技術の活用は欠かすことができない要素だと感じました。そのような経験もあり、いま最も開発が進んでいて、最先端の技術が扱れている分野の一つである宇宙業界にチャレンジしてみたいと考えるようになりました。コアなテクノロジーを持っていることは、自分の一番の関心分野である環境問題(特に新興国)を含む社会課題に対して、当時、有効なアプローチ方法だと思いました。それが、スペースシフトへ入社した理由の一つです。」

これまで一貫して地球の課題に向き合い続けてきたが、そのアプローチの仕方は一つではないと話す多田さん。学生の頃と比べ、間口を広げて様々なチャレンジの機会を持つようにしているそうだ。その一つが、日本文化の香道(東南アジアで産出される香木の香りを鑑賞する日本の芸道)。「衛星データ」というテクノロジーとは一見相反するようにも見えるが、異なる要素をバランスよく組み合わせて新しいアイディアを追求することを、会社としても、個人としてもミッションに掲げているという。

私は、何か1つの分野で飛び抜けるような才能やスキルは自分にないと思っています。ただ、異なるものを組み合わせ、調和させていくことは得意なのかもしれないと思っています。香道を始めたのは、社会的に弱い立場の人の助けや地球が抱える課題の解決につながるヒントが、精神性や美学、長い歴史があるものに隠されていると直観で感じたからです。香道を含む日本文化の『道』とは、一生をかけて精進していくということ。私は、テクノロジーを扱うスタートアップにいて、スピードが求められる世の中に生きていますが、オフィスにいる時とは異なる時間軸を自分の人生に持つことで、生き方の幅を広げられると思っています。テクノロジーのように物質的で刻一刻と変化していくものと、精神性や感性、美意識といった目に見えないものとのバランスを大切にしたいですし、今の世の中にもそれが必要と考えています。」

「香道では、香りを『聞く』と表現します。鳥や虫に噛まれて傷ついた木が、樹脂を出して傷を固めた部分から、十数年から百年かかって香りを放つようになったものが香木です。全ての樹木が香木になるわけではなく、傷ついて困難を乗り越えた木だけが香木になります。私たちは、この地球の宝物ともいえる香りを聞く。これは、「地球の声を聞くこと」でもあると教えて頂いています。宇宙関連の事業には、衛星を打ち上げたり月に行く技術を開発したりと、地球から宇宙を目指すものが多くありますが、スペースシフトで行っているのは宇宙から見た地球のデータ解析。地球の問題をテクノロジーで解決することと、香道で地球の声を聞いて精神性を高めていくということは、地球や宇宙、私たちが生きる現代社会と向き合うという点でも、共通する部分が多くあると感じています。私は、宇宙ベンチャーにいるけれども、結局は地球が好きなんですよね。」

多田さんはなぜこれほどまでに、環境問題を深く見つめる情熱を持っているのだろう。実は大学在学中、ラクロス部に所属しキャプテンを務めた後、大学院でミス・ユニバース・ジャパンに出場・選出するなど、自身を追い込み成長させる環境に常に身を置いてきた多田さん。ベースにあるのは、内面の真の美しさや強さと向き合い、鍛えられたメンタリティ。だからこそ、物事の本質を常に問い続けながら、どんな状況も楽しむ姿勢を持っている。現在、スペースシフトで働きながらどんなことを感じ、どんな未来を描いているのか。

「ベンチャーに入り、既存ではない新たな市場を築いていくという挑戦は、まだ誰も開拓していない分野の先頭に立って歩いている感覚です。山登りにも似たような感覚で、難しくもあり面白いのです。衛星データは、将来的に広く活用されるだろうと確信しているので、その未来に向けて微力ながら貢献できるということはこの仕事をしている醍醐味とも言えます。事業開発担当として、数年後の世界や展望を具体的に想像し、イメージやビジョンを提供することが求められていることにとてもやりがいを感じます。」

「テクノロジーは、これからも社会問題を解決するために使われていくだろうと思いますが、イノベイティブな技術は適切に活用しないと望まない未来を導いてしまう可能性を孕んでいます。要は、テクノロジーを使う側の姿勢がとても大切です。技術が適切な方法で活用されることで地球や社会の課題が解決される未来、つまりは、私たちの身近な環境で技術が正しく活用される世界を作っていきたいと思っています。道のりはまだ長いですが、衛星データがより有効に活用される世界の実現に向けて、学び続けて、多くの人に伝えていきたいですね。」

多田さんにとってInspired.Labとは?

「ポジティブなエネルギーのある空間です。メンバーのみなさんそれぞれがビジョンやパッションを持っているので、とても良い空気に満たされているなと感じます。実際にコミュニケーションをさせていただいて刺激を貰うことも多く、元気になれる場所です。」

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