明石 宗一郎 Soichiro Akashi – LANDLOG / Chief Digital Officer –
2025年、建設業界における労働人口の1/3にあたる約130万人が、高齢化のため離職してしまうという。過疎化が進む地域では、家の建設はもちろん、橋の修繕などもできなくなってくる状況において、建設業界の生産性を上げていくことは、国としても解決を図るべき課題となっている。
LANDLOGは、民間企業としてこの課題に取り組むべく、明石さんら中心となってSAP、小松製作所、NTTドコモ、オプティムとの4社で立ち上げた共同事業である。目指すのは、IoTを用いて建設プロセスの生産性向上を促すオープンプラットフォームの普及。建設現場や、建設機械から様々なデータを取集し、パートナー企業へ提供することで、建設現場の働き方を効率化する仕組みを開発していく。
明石さんはCDOとして、SAPから出向する形で設立から事業開発全体に携わっている。もともとアクセンチュアで働いていた明石さん。コンサルタントとして事業をサポートする立場に限界を感じ退職を決意、心機一転シアトルへ留学。その後縁もありSAPに転職。そこで新規事業立ち上げの機会に巡り会い、LANDLOGへ参画することとなった。今では、スタートアップでもなく大企業の事業部でもない、特殊な立ち位置で働いているからこその新たな壁、例えば、複数の大企業が出資者として携わっており、それぞれに異なる思惑があることによるイノベーションへの障壁にぶつかることで、新たな気づきも多いという。
そこを打ち破っていく鍵となるのは、「例え少数であっても、テニスのように想いを壁打ちし続け、立ち向かっていくこと」だと話す明石さん。「担当者同士でずっと語り合えるほどの想いがあり、それを具体化、言語化できれば、大企業にありがちな既成概念を打開していける」。そうしてLANDLOGを立ち上げ後も、担当者同士の「壁打ち」を続けた結果、建設現場に限らずバックオフィスをも包含する構想を立ち上げ、世界規模で建設の課題に取り組む事業を計画するなど、その想いは留まることを知らない。
そんな明石さんにとってInspired.Labは「実験場」。LANDLOGの協業はもちろん、自身の事業を超えた働き方や、自分が所属する会社外の実験も、どんどんアクセプトしていく場所にしていきたいとの想いから、明石さんが最初に選んだテーマは「華道」。
「Inspired.LabはIoT、AI、Robotics等、先進的なテーマをメインとしているが、それらの成功の鍵は、実は日本古来の歴史や、特有の文化などのサステナブルなものではないか?」という自身の仮設から、高校時代の友人でもある華道家の生駒氏に相談。ここでも要となったの「壁打ち」。華道という非デジタルなものだからこその価値について2人で語り合い、まずはInspired.Labメンバーに向けたワークショップを開催し反応を確かめた。その後も2人の壁打ちは続き、さらにInspired.Labのカフェメンバーも加わることによって、Inspired.Lab新年会にて好評を博した、華道ライブ「華と料理によるクリエイティブ」につながっていった。
「ワークショップとライブ、2度の開催を経て、参加してくれたメンバーの反応からも、仮設に対する確証を少し得られた気がしています。今後はより歴史や季節の移り変わりを感じられるものにしていきたいですね。きっとこれは他の、“いわゆるシェアオフィス”では難しいので、他のメンバーも、本業ではもちろん、僕のようにInspired.Labをうまく実験場として活用していったら良いと思います」。料理の提供とともにライブで生けられた花々は、従来の商業施設の生け込みとは逆行し、日々植物としての変化で私たちを楽しませてくれており、メンバー同士の新たなコミュニケーションのきっかけにもなっている。
「新規事業の立ち上げや新しい取り組み、何にでも言えることだが、皆がファーストペンギンになりたくない中で、誰かが飛び込まなくては物事は始まらない。この状況を打開していくのが、ずっと語り合えるほどの想いを持った人間と、壁打ちができる環境さえあれば、たとえ小規模なチームであったとしても、結果的に上長や大きな組織、周りも巻き込んでいける。片方がやられたら、もう片方が慰めて。そうして前進していくんですよね。Inspired.Labが、組織を超えた繋がりを築いていける場所になったら。」
チーム内や社内に留まらない「壁打ち」の環境がInspired.Labにはある。それを活用することが、Inspired Lab.で働く醍醐味のひとつ。明石さんはインタビューを通じて私たちにそんなメッセージを残してくれたのではないだろうか。