AIを使った医療が当たり前な未来へ

エルピクセル株式会社はライフサイエンス領域の画像解析に強みを持ち、医療・製薬・農業の各分野においてAI技術を応用した高精度のソフトウェアを開発している。AI画像診断支援技術「EIRL」は独自のアルゴリズムによりCT、MRI、胸部X線などの医療画像情報を解析し、効率的で正確な診断が出来る環境の提供を目指している。Inspired.Labメンバーの宮川哲さんはこのEIRL事業本部製品開発グループに在籍している。

「製品開発グループでソフトウェアエンジニアをやっています。人間でいうところの頭や脳の部分を作るアルゴリズムエンジニアに対して、僕が作っているのはその他の手足や胴体、目鼻口に当たるところです。CTやMRIで撮影した画像を保存しておくデータベース等、病院のネットワークシステムとコンピューター上でコミュニケーションをとったり、解析した画像を医師が見ることができる形に加工したりという外側の部分を作っています。ソフトウェアであっても、病院で使うとなると医療機器という扱いになるので、厚生労働省管轄の機関から認可を受ける必要があります。認可を受けるために社内で製造や開発に関するルールがあり、そのルールに沿って業務がスムーズに回るよう運用を工夫する役割も僕が担っています」

宮川さんは小学生の時に国立科学博物館で展示されていたコンピューターに出会い、魅せられた。そして中学時代、技術科の先生自作のコンピューターが動くのを目の当たりにしたことが、宮川さんが進む道を決定づけることとなる。

「今の若い人には想像しにくいかもしれないですが、基盤に黒いゲジゲジのようなものが剥き出しでついている80年代当時のコンピューターを先生が持ってきて動かしてくれたのを見て、これはおもしろいなと思いのめり込みました。高校生の時には、ポケットコンピューターという小型のコンピューターを自分の小遣いで買い、雑誌などを読みながらプログラムを打っていました。大学に入る頃にはもう自分はソフトウェアで仕事をするんだということは何となく固まっていましたね。医療業界に行きたいという志があったわけではないのですが、就職するときにたまたま縁があり入ったのが医療機器メーカーでした。ソフトウェアだけで動いているものより、ソフトウェアで機械やロボットを動かすというものに面白みを感じており、医療機器にもコンピューターを制御することにより様々なことができるという点において魅力を感じました。そこでCTやMRIを制御するソフトウェアを作り続ける中で、医療という分野のバックグラウンドや、医療機器関係のプロセスやルールのようなものが身につきました。医療業界は法律の縛りなどが厳しく、正直面倒や手間も多いんです。もう少し自由が効く業界に行こうかと考えたこともありましたが、面倒なことは誰にとっても面倒なので、それが身についているというのは特技や強みになります。そんな風に考えながら、今でも同じことをやっていますね(笑)」

作ったものが社会の役に立っているということが見える。それが最も大きな喜びであると宮川さんは語る。

「自分が作ったソフトウェアが搭載された機器が実際の医療現場にあり、社会貢献をしている感覚が持てるというのはとてもやりがいになります。以前は20年もの間大きな企業の大きな部署の1人として働いていたのですが、個人の事業や会社、ひいては社会への貢献度を大きくしたいと思い転職しました。もちろんリスクはありましたが、スタートアップの方が自分の力でやり切れる余地が多いですし、大きな潮に流されてしまうより自分で泳げる仕事の方が魅力的だなと考えて、当時創業4年目だったエルピクセルに来ました。2018年のことです」

ITと医療を掛け合わせた業界で、好奇心と根気を掛け合わせながら今日まで働いてきた宮川さん。その目にはどのような未来が見えているのだろうか。

「AIを使った医療がこれからどんどん発展していくだろうと思っています。ただ、今はまだ入り口なんですよ。新しいテクノロジーというのはまず出始めの頃に世間に大きなインパクトを与えて期待がバブルのように膨らむ時期があり、そのあとにバブルが弾けあまり期待をされなくなるいわゆる幻滅期という時期を迎えます。でも、実際には技術は成熟していって、だんだんと目に見える形で社会の役に立っていくものです。AIを使った医療は今は幻滅期に入って来ていると言われているのですが、それを通り抜けて医療画像診断の業務フローの中でAIを活用する部分がどんどん増えていくと医療画像診断そのものの概念が変わってくるかもしれないと思っています。どう変わるかはまだ分かりませんが、10年後20年後に、昔はそんなこと人がやっていたんだ、と言われるような世界になっていくと思います。そんなことが想像できること自体がとてもおもしろいですね」

-宮川さんにとってInspired.Labとはどんな場所ですか?

「同じ場所にこれだけテック系のスタートアップが集まっているというのは大きな魅力ですよね。IT業界というのは会社の垣根を超えた同業者のつながりが結構あるんです。オープンソースというフリーでみんなが使えるソフトウェアを作りながら会社でもコードを書いているというような人も多いのです。僕はメーカーにいた頃にはたまたま縁がなくてそういうつながりがあまり持てなかったので、Inspired.Labにはエンジニアの方も数多く在籍していますし、会社の垣根を超えて同業者のエンジニアと交流できたらいいなと思いますし、それができる場所だと思っています」

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